【NOVEL】 死者のための音楽 [著] 山白朝子
【著者】山白朝子
【出版社】角川書店
【初版】2011年
【形態】文庫
【単行本】2007年
【他出版】- - - - -
【シリーズ】ノンシリーズ
【ジャンル】短編
【あらすじ】
教えたこともない経を唱え、行ったこともない土地を語る息子。古い井戸の底に
住む謎の美女。すべてを黄金に変える廃液をたれ流す工場。身元不明の少女
に弟子入りされた仏師。山に住む鬼におびえて暮らす人々。父を亡くした少女と
人が頭に思い浮かべた物を持ってくる奇妙な巨鳥。生まれつき耳の悪い母が魅
せられた、死の間際に聞こえる美しい音楽。親と子の絆を描いた
収録されています。
乙一さんといえば描写のきついホラー作品やサスペンス作品が多いなか感動
的な作品もあり基本ホラー作家というイメージがありつつもマルチなジャンルで
活躍されているという印象でした。
そこで各ジャンルを別名義で自由に書こうということで怪談というジャンルを
この山白朝子名義で書くことになったようです。
怪談といっても怪談調という感じですね、なので作品は現代的なものから時代
ものと舞台は幅広くすべての作品が語りになっています。
しかしそこに不思議な現象が巻き起こりつつものどこか暖かい作品もあるんで
すよね
一編は短く前ページも220ページと少ないので気軽に読める構成になっていま
す。
職場での休憩時間や移動時間等に読むのにちょうどよい一冊でした。
♪ [長い旅のはじまり]
最初のこの作品を読んでもうこの本に引き込まれてしまいました。
不思議なお話ではありますが突っ込みどころもあります。しかしそんなことは
どうでもよいそんな話です。
飢饉にあえぐ村のお寺の住職が語り手です。彼の村におなかから血を流した
少女が運び込まれてきます。
旅の途中野党に襲われたようでお父さんは無残な殺され方をし少女も腹を刺
されたものの何とか逃げ出したそうです。
そんな彼女は幼くして妊娠します。しかし彼女曰く自分は経験がないでも
新しい命の存在を感じるといいます。そして本当に出産し子供も大きくなりま
すが、彼の子供は泣きお父さんの知識を受け継いでいました・・・
生まれ変わりを題材にしていています。
♪ [井戸を下る]
井戸の中に部屋を作りそこに雪のように白い肌の女性が住んでいる・・・この設
定が飛びすぎていて面白かった。
もうなんかなにこれ?と思うより流石という感じです。
この発想で面白く感じさせるのはすごいですね、もちろん屋根はないので・・・
また井戸の底だし湿気が・・・虫も・・・しかしさらに終盤びくりします
なんとそこに畳を敷いていたわけではなかったのですね、そもそもこの子は
どうやってその部屋をそんな場所に作れたの?って感じです
だからずっと主人公と井戸に住む女性の幽霊のお話だと思ってましたが
ラストの展開にびっくりです。
♪ [黄金工場]
この作品はどちらかというと乙一さんの作風ですね、お母さんと幼い息子が登場
します。息子さんが語り手になっています。
黄金工場・・・なんだか心引かれますね、工場の排水を流すところで黄金の
コガネムシを拾います。少年は近所で心引かれる工場で働く女性にプレゼント
しようとしますが意味深なことをいわれて自分が持っていなさいといわれました
お母さんに見せると早速その廃液の場所へそこにはたくさんの黄金の虫が
液体に沈んだ生命のある生き物は黄金に変わることを知ったお母さんは
黄金虫を毎日捕りに行き砕いて売りに行くのでした。
少年はお金に執着がなく自分のコガネムシ以外には興味を示しません
工場がつぶれ取り壊しが決まったとき最後にとっておきの黄金を・・・それは
・・・しかしお金持ちになれたと思ったら黄金の効果はコガネムシが普通のコガ
ネムシに戻ったところで終わりを告げるのでした。
♪ [未完の像]
自分は鬼だと名乗る高飛車な態度の少女が彫り師のところに弟子入りに来ます
これまでたくさん人を殺したからそのうち捕まり処刑される、それまでに仏様を
掘りたいと彼女はいいます。
彼女が掘ったものは生命を宿し語り手であり師匠の弟子は驚嘆するのでした
死都心を抱きつつも彼女に彫刻を教えていきますが・・・
彼女は本当に鬼だったのでしょうか、最後はちょっともの悲しい感じです。
♪ [鬼物語]
鬼の住む山の麓の村に住む二人の幼い姉弟が鬼に立ち向かう話です。
彼女たちのお母さんの話も織り交ぜ短辺でありながら時間軸をずらし構成され
ていてびっくりしました。
村の人たちはお母さんの事件があっても実際に姿を見たわけもなく鬼といえば
物語の怪物というイメージしかないなのでお母さんとおじいさんの話を信用しま
せんでした
大きなクマだと思っている村人たちは山に火を放ちますが・・・怒りにまかせて
現れてあのは・・・
泣き虫でどんなことでも泣いてしまう心優しい弟はお姉ちゃんを救うために
一世一代の勇気を振り絞るのでした。
この作品は乙一特有のスプラッター描写もある作品です。
♪ [鳥とファフロッキーズ現象について]
図鑑にものっていない謎の鳥が怪我をしていました。語り手の女子高生と小説家
のお父さんは鳥を拾って治療し手あげます
二人になついた謎の鳥は完治しても家にとどまりました。
そして二人が望んだものをどういう手段でかわからないけれど用意してくれるので
した。
そんなときに少女が留守中に強盗が入りお父さんが殺されてしまいます
悲しみにうちひしがれた少女は家に引きこもってしまうのでした
そんな彼女の世話を鳥がしてくれていました・・・しかし望んだものはすべてかなえる
鳥は少女の憎しみもかなえてしまうのです。
余計に人とふれあうことが怖くなる少女ですが・・・
♪ [死者のための音楽]
表題作になります。この作品の語りは耳が不自由なお母さんとその娘になり
親子の絆を描いた作品となっています
お母さんは子供の頃に死にかけたことがありそのときに頭の中に流れるある
すばらしい音楽を耳にします
その音楽を聴きたい、耳が不自由なお母さんは今もなおあの音楽を探し続けてい
ました。
二人の語りでその不思議な音楽とお互いが大切に思っていることそして感謝の
気持ちが語られていくのでした。
お母さんが聞いたすばらしい音楽はきっと死にゆく人たちが安らかな気持ちで旅
たれるようにと流れているんだなと娘は感じるのでした。
表題作になるだけありとてもすてきなお話です
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