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【NOVEL】 エムブリヲ奇譚 [著] 山白朝子

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【著者】山白朝子
【出版社】角川文庫
【初版】2016年
【形態】文庫
【単行本】- - - - -
【他出版】- - - - -
【シリーズ】旅本作家シリーズ
【ジャンル】怪談


【あらすじ】
「わすれたほうがいいことも、この世には、あるのだ」無名の温泉地を求める旅本
作家の和泉蝋庵。荷物持ちとして旅に同行する耳彦は、蝋庵の悪癖ともいえる
迷い癖のせいで常に災厄に見舞われている。幾度も輪廻を巡る少女や、湯煙の
むこうに佇む死に別れた幼馴染み。そして“エムブリヲ”と呼ばれる哀しき胎児。
出会いと別れを繰り返し、辿りついた先にあるものは、極楽かこの世の地獄か。

乙一さんの別名義である山白朝子さんの連作短編集です。江戸時代を舞台に
していますが当時の言葉使いや単語を使わず現代風の語りになっているので
非常に読みやすいです。
現代風の語りでも時代がわかるように書かれていていいですね、主人公は
和泉蠟庵(いずみろうあん)という旅本作家で版元の依頼で噂の温泉など
一般の道中記にはのっていない名所を探して体験して本にするという職業で
彼と博打好きの耳彦という荷物持ちです
一本道で道に迷い最初の場所に戻ってしまうもうわざととしか言いようのな
いほどの方向音痴の蠟庵が面白いですね、そのせいでたどり着く村は
他の村や町の人も知らない場所でありそこで何かしら巻き込まれるという感
じです。
蠟庵はよく出来た人物ですが荷物持ちの耳彦は博打の借金を肩代わりしても
らうたびに荷物持ちとして雇われているという感じで、日頃の生活などから
も俗に言う残念な人になります。
かといって根っからの悪人ではなくまあだらしない人という感じです。
その割に荷物持ちは仕事と割り切りしっかりこなしているのが不思議です
職に就けない就いても長続きしないといってますが蠟庵の荷物持ちという仕
事はしっかりこなしてるんですよね・・・
主に彼が怪異に巻き込まれたりして人間性を試されることが多いです。
良い結果であれ悪い結果であれ耳彦は蠟庵との奇妙な旅でなんだか成長して
いるような・・・気がします。
9編の連作短編になっておりほぼ蠟庵の方向音痴で訪れた村での体験です
1編が短くページ数が少ない割に起承転結が見事で物語に入り込めました
その辺はさすがです。

♪ エムブリヲ奇譚
このお話は思いのほか好きな作品ですね、自堕落なだめ男の耳彦がエムブリヲ
といわれる人間の胎児を拾います。
普通は死んでるはずですが何故か不死身のようで生きていました。
生きている以上はむげには出来ないとそばに置いていたら胎児の方も耳彦に
なつき・・・最終的に女性の体内じゃないと成長しないと言われ産みの母親を
さがします。
彼女に胎児を託し数年の月日がたった頃一人の女の子に声を掛けられおじさん
のこと知ってるよ、一緒に住んでいたことがあるよと言われるのでした
あの自分に懐いていた胎児と再会した耳彦のお話です。

♪ ラビスラズリ幻想
輪廻転生のお話で7回人生をやり直した少女の話でした。蠟庵の版元で働いて
いる輪という少女が蠟庵と耳彦の旅に立ち会うことになります。
当然不可解な方向音痴に巻き込まれある村にたどり着きそこで死にかけている
少年を救ったことで老婆にお礼と言ってラビスラズリの首輪をもらうのでした
それを身につけていたら死んでも人生をやり直せる、ただし自殺は地獄行き
といわれます。
少女はその宝石で7回人生をやり直しますそのつど記憶を持ったまま・・・
最初は良かったけど何度も人生をやり直すたびにつらくなっていく記憶だけは
引き継いでいくのですから、彼女はある決意をします。
もう人生をやり直すのはやめようと・・・そして最後は顔も知らないお母さん
を救うことを決意します。
自分を生んで死んだお母さんを救うために体の中に居る間に自殺したのです
輪は地獄に落ちたけどお母さんは救えたというお話です。

♪ 湯煙事変
れいによって迷ったあげくにたどり着いた村の温泉は昼入るのは大丈夫だけど
夜入りに行った人間は衣服だけ残して消えてしまうと言われます
村は寂れ人も陰気でなにやら様相がおかしい村、天然な蠟庵は何も考えていな
いようです。それより夜入ると消える温泉興味を持ち耳彦に入りに行かせます
が・・・そこに現れた人影達決して湯気で顔が見えないけれど彼らは耳この知
り合いでした。しかし彼らはみんな死んでいるはずのひと、しかもどうやらそ
の温泉の大きさも変わっているとか、黄泉の温泉と夜にだけ繋がっているので
はないでしょうか、懐かしい人たちといることで夜が明けそのまま黄泉の世界
にとどまってしまうから消えてしまうと言うことでしょうね
そこで出会った一人の少女だけが声を掛けてきます。彼女は早く温泉から出る
ように忠告してくれます。そう彼女は幼い頃の遊び友達で耳彦の初恋の子
彼女だけが話しかけてきたのもきっと彼女にとっての初恋の相手が耳彦だから
だったのではないでしょうか・・・無事帰った耳彦は彼女が話していた転落し
た場所に行き彼女の亡骸を発見してあげるのでした。何とも切ないお話です

♪ 乄(しめ)
これは一番嫌な気分になった作品ですね、旅の道中に出会った一匹の鶏耳彦に
なつき着いてくるので旅のお供に名前を小豆とつけてかわいがる耳彦でしたが
いつものように迷い込んだ漁村では建物や魚に植物に至るまで人の顔をしてい
ました。
そんな村で重い病気で倒れた耳日こと蠟庵でしたが蠟庵はそんな人の顔をした
魚の料理を平気で食べますが耳彦は人を食べてるように思えてどうしても口に
出来ず病は深刻化していきます
彼が最後にとった行動は人面の魚や野菜を食べることではなく小豆を選んでし
まうのでした・・・
実際あり得ないのでしょうが人のように見えるではなく完全に人の顔を持つ物
たち魚などは腹を割いたら魚なのに胎児が出てきたりします
そんなのを見たら食べられないですよね、小豆を選んでしまうのは無理なので
すがっそれまでの耳彦と小豆の関係を読んでると何ともいえない気持ちに
二者択一ですが私なら人面の野菜を選びますね、少なくとも野菜は生物じゃな
いし・・・おかげで回復した耳彦でしたが蠟庵が集めていた小豆の骨をみて
抱きかかえて号泣する耳彦がなんともかわいそうでした・・・
よりによって何故あんな村に迷い込んでしまったのか

♪ あるはずのない橋
旅の途中で跳ね橋を見つけた二人はたどり着いた村で話を聞くとその跳ね橋は
存在しないといわれます
昔橋が崩落し何人もの犠牲者をだしたそうです。
その村でであった足の悪い老婆はその跳ね橋に行きたいと耳彦に訴えます
何でも昔その橋の崩落に息子が巻き込まれたそうでもしかたら会えるかもしれ
ないと、その夜耳彦は彼女と息子の再会を見たいという理由で老婆をおぶって
跳ね橋の場所に向かいます。
今回もまた跳ね橋がかかっていたので足の悪い老婆の代わりに橋に入って
子供を探すのでした・・・そして再会させたのですが結果は・・・
橋を渡った物は帰ってこないというのはこういう事だからでしょう、そこで
人間の危機に陥ったときの行動が出てしまいます
自己犠牲というのはなかなか出来ることではなくたぶん耳彦のとった行動が
普通なのかもしれません・・・蠟庵にただ息子と再会した老婆の姿が見たかっ
ただけなのにと放心する耳彦が印象的です。

♪ 顔無し峠
タイトルはとても怖そうな感じですが内容はいつものように迷い込んだ村で
今度は耳彦が喪吉という人物とそっくり生き写しらしく死んだはずの喪吉と
思われてしまいます。
あげくに喪吉の奥さんと息子の鼻太郎君が現れ・・・自分は他人だと説明し
ますが、その喪吉もみみ太郎と全く同じ性格で身体的特徴も同じ同じ場所に
傷がアリその傷が出来た理由まで同じ耳彦が話していないのに奥さんが言い
当ててしまいます。
自分とそっくりな人物が世間には3人いると言われていますがその中の一人
じゃないかといいますが姿が同じだけではすまないこの状況で・・・
混乱する耳彦ですが翌朝蠟庵は旅立つけどどうするか聞かれてしまいます
耳彦はここに残る決意をし大工仕事が出来るように練習するのでした
しかし・・・やはり奥さんは喪吉では死んでいないとわかっていながら耳彦
を喪吉と信じたかったと告げるのでした
しかしそれにしても喪吉という男は全く耳彦のコピーといえる感じですね
耳彦も言ってましたが違いは養う者が居るか居ないかの差だけです。

♪ 地獄
この作品はトビー・フーバー監督の名作『悪魔のいけにえ』をモチーフにし
た作品ですね、悪魔のいけにえを連想させる内容ばかりで面白かったです。
さすがにレザーフェイスは出てきませんが殺した人の皮で作ったマスクなど
いかれた家族とか・・・
映画を知らなくてもなかなかの怖さがあると思います。
いつものように迷子になり山道を歩いていたら山賊に襲われてしまい耳彦だ
けがとらわれてしまいます。
捕らわれた先には耳彦意外にカップルがいて・・・


♪ 櫛を拾ってはならぬ
これは完全にホラーですね、今回は道に迷ってとかではなく『地獄』の傷が
いえない耳彦の代わりに版元に頼んで荷物持ちを頼み旅に出た蠟庵が耳彦の
元へやってきて荷物持ちの青年が不可思議な死を迎えたことを話してくれます
それは櫛にまつわる話で櫛とは苦死であり落ちている櫛を拾うというのは
苦しみ憎しみを拾うことになるそのために昔の人は一度踏んづけてから拾う
そうです。
その青年は怖い話が好きで母親からよく聞かされていたといい蠟庵に旅の間
百物語をしようと持ちかけていました
そんなさなかにその青年は女性のような長い髪の毛がまとわりついたりする
怪異が起こるようになりそして最後には・・・
後で調べてみると真相が見えてきます。蠟庵の見解は自殺だったということ
です彼の最後の晩の会話はどうやら櫛と髪による怪異で自分が死にその話が
怪談として世に広まり残ることを望んでいるかのようなことを言っていまし
た。それに蠟庵は利用されたということでしょう

♪ 「さあ、行こう」と少年が言った
このお話は蠟庵の少年時代のお話のようです・・・というかこれまでさんざん
方向音痴の迷い癖と言ってましたがどうにも違うだろって感じの迷い方でした
この作品ではもっと突っ込んでかかれていて完全にテレポートしてますね
しかも自分一人がではなく周りも多少巻き込むようです
しかも本人に自覚なく発動も自分で操作できず行き先も決められないようです
その割にと言う感じですが潜在的な行き先が決まっていれば・・・って感じで
しょうか、この作品の語り手は嫁いだ先で壮絶ないじめに遭っている女性が
蠟庵少年によって助け出され幸せな人生を送るという内容です
そのためいじめられるシーンなどは不快でしたが少年と出会い読み書きを
教わり本を読む喜びを覚えていく主人公に共感を覚えました。
ラストは何ともいえない幸せな気持ちになります。
ただ耳彦はこれまであれだけの経験をしていたのに未だに変わりのない生活を
している耳彦が登場しがっかりさせられました。

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